俺はこんな仕事をしてるから、だからこんなことを言うのは職務怠慢ってわけじゃないけど、なんとなく後ろめたくなっちまう。でも、もうそろそろいいんじゃないか、とも思うわけで。だから俺は今こうして思うところを言おうとしているんだけれど、その相手が家族のように過ごした連中じゃなくてアンタだってのは、ありがたいというかなんというか。 俺はこんなになってまでまだ手前の面子を取り繕うとしてるんだ。普段、連中ときたら俺のことを使い走りのように(まあ実際使われるのが仕事なんだけど)使うんだが、それでも心のどこかでは俺のことを認めてくれているんだろうと思う。信じている。もし連中が本当に俺のことをパシリとしか見ていなかったとしたら、それはたいそうショックなことだ。俺は、今この時でさえ連中の、あの人らのことを大事に思い、任務に手前の生命総てをささげてるってのにな。 「それで、言いたいことってのは何なんだ」 ああ、話がそれた。俺の悪い癖なんだ。あの連中とつるんでるとどうにも楽しくてだから一つの話題から三つも四つも違う話題に飛び火しちまう。ああ、またそれそうだったな。 言いたいことってのは、そんなに改まっていうことでもないし、よくよく考えれば、万事屋の旦那だったらともかく、よりによってアンタに言うのは可笑しい気がしてならねえからやっぱり言うのはよそう。 「俺を舐めてんのか?」 そんなつもりはねえよ。でも、ほら、これは俺の勝手な推測に過ぎねえから、気を悪くしたら申し訳ねえが、アンタは俺と同じ匂いがするんで、もしかしたら俺の気持ちもわかってくれるんじゃねえだろうかと思ってるだけなんだ。 「生憎俺は手前ほど地味な人生は送ってねぇぜ」 ああ、そうだろう。そうなんだ。でもどうしてだかアンタからは俺と同じ匂いを感じるんだ。なあアンタも俺と同じように、 誰かに存在を認められ、価値を見出され、 誰かの記憶に残りたいと思ってるんだろう? 「……言いたいことはそれだけか?」 ゆっくりと頷くと、高杉は既に俺の四肢を切り落とした、えらく切れ味の良い刀を再び煌かせ、 俺が最期に見たのは血で汚れたはずの刀の、偉く眩しい光だった。閃光にまぎれて、高杉が何か言ったようだったけれど。 |