お盆休暇を利用して久しぶりに実家へ帰る。
ちゃんと3食飯が食えたり、風呂が勝手に湧いてくれたりする(実際は誰かが沸かしてくれてるのだろう)からとても楽なのだが、やはりこの時期に帰ってくるべきではなかった、と思ってしまう。リビングでの女性3人の会話から逃げるように、かつての自分の部屋に閉じこもった。置いていったままのベッドに横になる。エアコンの電源を入れて、なにをするでもなく、天井を眺めた。数年間は野球から離れたくなる、テレビ中継はおろか、新聞の地方面の端っこも見たくなくなる、と話には聞いていたが、それにしてもオレは長すぎやしないか。あの日からもう7年だ。あいつらは皆、乗り越えることができたのだろうか。いつまでも囚われているのはオレだけなのだろうか。贔屓の学校に有利な展開になったのだろう、母親たちの歓声がドアを越して聞こえてくる。
ベッドの上に起き上がって、カーテンの向こうに広がる青い空を見上げた。眩しい。この眩しさのなかで感じた総てを、過去のものにすることが、オレにできるのだろうか。馬鹿らしくなって、ふたたび寝転ぶ。あの頃のままの勉強机の上に、あの年の卓上カレンダーをみつけて息が詰まった。そろそろと無駄に震える指を伸ばす。ざらりとした感触の、すっかり日に焼けたそれは8月のままで。白くなってしまった真っ赤なインクで記したマル印は、忘れもしないあの日のことで。あの日の天気、やたらと湿度が高かった朝、夕方の、泥だらけで泣いた皆の顔、監督の笑顔。全部がまだオレにとっての現在であることに気づいて、鼻の奥がツンとした。

明日、部屋を片付けようと思った。



2008/07/24