一緒に飯を食いに行った以外は、半年前まで繰り返されていた部活後となにひとつ変わらなかった。沖の提案で皆でコンビニに行って買い食い。いつもどおりの、下りと上りにわかれるT字路で、今日は皆周りを気にせずに手を振る。「またな」って大きな声で言った誰かの声は少し震えていた。

式の最中も主役だというのに実感が沸かなかったし、今もどこか他人事のような気分だ。週末をはさんでまた会えるような感覚。またあの騒がしい毎日が戻ってくるような錯覚。あまりに自然な別れ過ぎて、もう会わないことが信じられないままだ。だってそうだ、あいつら今日も帰りにレンタル屋行ってから篠岡を駅まで送っていくって言ってたし、三橋はいつもどおり田島と遠回りする。オレも田島たちとは途中で別れて、そこから家まではウォークマンを聞きながら帰る。いつもどおりの、半年前までとなにひとつ変わらない、あたりまえの習慣。すっかり暗くなった道もその脇に並ぶ家や店もなにひとつ変わらないままで。あまりの実感のなさにひとり、声を立てずに笑ってしまったけれど。けれどイヤホンから流れてきたいつも聞いてる曲の歌詞がなんだかいつもと違うニュアンスで胸に響いて。染み渡ったメロディーが徐々に実感を連れてきて。軋む自転車を漕ぎながら鼻をすすったのは、寒かったからではないような気がした。

まだ寒い空気に身を震わせる。きっとこうして、たくさんひかれたラインをひとつずつ飛び越えていくのだろう、 と。なんだかよくわからないが、漠然とそう思った。

2008/02/25『おもいでにかわってく』04/24 修正