肌に刺さるような冷気に身をすくませながらホームへ降りると、こちらが捜すまもなく声を掛けられて思わず苦笑してしまった。はたはたと駆け寄ってくる姿は昔とかわらず、なんとなく可愛らしい。阿部君、いつまでオレのこと大事にしてくれるんだろう。呆れや甘えとはべつの、諦めに似た、でも言葉では表現できない感覚が戻ってくる。なんにしても、自分にとって彼が特別で、彼にとって自分が特別なのは事実で、そこには恋愛感情なんてものは存在しないけれど、良い気分なのも事実だった。
「阿部君!」
「久しぶりだな!」
満面の笑顔で迎えてくれる。どうせなら始発で来い、って言われたときにはどうしようかと思ったけど、正解だったかもしれない。どうやら本日の主役は本気で一日中遊ぶつもりのようで、ひどくご機嫌だった。
「行きたいとこ、目星つけたか?」
「どこでも、いいよっ!あ、これ、お土産…」
「べつにいいのに。でもま、あんがと。栄口、酒持ってくるみたいだし、つまみにでもしようぜ。……よし、とりあえず行くか!来な、ロータリーに車停めてっから。まあこんな時間に注禁きられることはねーだろうけど…」
「うん!…あ、ごめんね、あべくん」
「はあ?なにが?」
「まだ、朝 早いのに……」
「いいよ。オレから言い出したんだし、どうせ家居てもなんもすることねーし。それより三星、あけてきてよかったん?」
「あ、それは大丈夫。琉がいるし……瑠璃も……あ、榛名、さんは……?」
「んー?まだ寝てるんじゃねー?…あ、あいつのことは気にするなよ?今日は帰ってくるかも微妙だしな。だから遠慮なく騒げるぞー。っつっても、田島あたりは言うまでもなく騒ぎそうだけどな」
榛名さんのことを喋る阿部君は、いつもよりちょっと優しい顔になる。高校のときから、阿部君以外はみんな気づいていることだ。今も綺麗に笑ってて、オレも嬉しい。
「あ、そいで、悪いんだけどちょっと早めに家帰っていい?出前取ったり用意したりしなきゃなんねーからさ…田島も手伝ってくれるみたいなんだけど…」
「いいよ!オレも、手伝う!」
「おう、悪いな。いっぱいピザとか寿司とか取ろうな!」
「うん!あ、あべくん!」
「なに?」
「誕生日、おめでとう!」
「おう、あんがと」
笑った阿部君は、高校球児みたいな顔をしていた。
三橋は三星を継いでると良い
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