「田島も来るからいくよねー。しかも場所榛名ンちだし!一生モンだよねー!」

水谷の言い方は阿部にちょっと失礼じゃないかと思ったけれど、でもまあ仕方ないといえば仕方ない。なにせ今や野球に興味のないひとでも知っているほどに国民的ヒーローな田島様だ、会いたいに決まっている。榛名さんにも会えるんならなおのことだ。多分、オレや水谷に限らず皆、田島と同じチームだったことを誇りに思っているはずだ。

「みーずーたーにー、主役は阿部だぞー?」
「わかってるよー。ねえねえそれよりさー、プレゼントなに買う?つか買う?あ…、っていうか沖、予定だいじょうぶなの?夜勤とかなんじゃないの?」
「んーん、11日は普通に夕方にあがれる。……はい、腕捲って」
「あーい。……インフルエンザ、すごい流行ってるんだよね」
「ニュースでやってるだろ、今年はすごいよホント。例年より早い時期にきたから注射する間もなかったしねー。小児科なんかもうすごい忙しいくてやばい」
「内科も込んでんじゃん」
「小児科いってみ、すごいから。オレ昨日臨時で小児科いったもん。……はい、しばらく風引いたみたいになるけど、大丈夫だからね」
「わかってるって、毎年射ちに来てるんだから」
「ありがとうございます。……つか水谷こそ11日平日だし、仕事じゃないの?」
「仕事ー。さすがに有休もう残ってないんだよねー…。だからオレも夕方から参加かなぁ…三橋とかは昼から遊ぶらしいけど…あそーだ沖!一緒に行こうよ。で、途中ふたりでプレゼント買おう!お金出し合ってさ!ね?」
「買うんだやっぱり。別にいいけど……阿部ってなにが好きだっけ?」
「………」
「………」
「「野球……?」」

それしか思いつかないからオレたちって相当阿部のこと偏った目で見てるとおもうけど、でも阿部イコール野球ってのがいちばんしっくりくる。あの頃のちょっとおっかない阿部を思い出して、あの頃と同じ人懐っこい顔の水谷と、こっそり笑いあった。


内科医沖と患者水谷