あの永く哀しい戦いの後、すぐに私が貴女の許へ戻らなかったのは、貴女との何度目かの長い別れがどうしようもなく恐ろしかったからなんです。いつも貴女が眠るときは寂しい。けれど今回は、多分ずっと秘めていた想いを伝えた後だからでしょうか、ひどく胸が締め付けられてしまったのです。私は弱い。貴女が眠るたびに、私はどんどん臆病になるのです。
貴女はとても強い。女王としての能力の話ではありません。もっと高等なところで、貴女の強さは輝いています。心の奥底では愛し合っていたもうひとりの女王を倒すと決めたときも、彼女とリクの娘達を殺さないと決心したときも、貴女は気高く美しく、そして強かった。貴女だけではありません。カイや赤い盾のメンバーも、とても強い意思と力を持っていた。世界のために戦う貴女や彼らは、私にとって眩しすぎるほどの存在でした。
私は弱い。いつだって私はとても弱いのです。あの日貴女と初めて出逢ったあの噴水の前から今日まで、私はずっと弱いままだ。貴女に嫌われることを懼れ、恐れられることを懼れた。だから私は沖縄で家族と笑いあっていた貴女に動物園のことを言えずにずっといたのです。言うべきだった。言うべきだったのです。貴女自身が自発的に思い出すべきだと、そう考えていた私のなんと浅はかなことでしょう。貴女はいつものように笑って私を励ましてくれるでしょうが、けれど本当は小夜、私は尤もらしい理由を振りかざしながらその実、唯逃げていただけなのです。私は弱い。貴女と過ごしたどの年月を、どの季節を、どの瞬間を切り取っても、そこには貴女の眩しさに焦がれていただけの弱い自分しか居ません。
独りになると、もう私を陰に置いておくことはできなくなりますから、嫌になるほど自分が弱いことを思い知らされます。先程も言いましたけれど、だから私は今日まで此処へは来れなかった。あの戦いからもう5年です。貴女の兄は立派に店を継いで、貴女の姪たちは貴女や彼女同様とても凛々しく美しく成長しているというのに、私はというと、やっとこの場に立てただけです。まったく、笑ってしまうほどに私は弱い。だから小夜、こんな私を笑ってください。
嗚呼、でも貴女は私のこんな不甲斐ない姿を見たら笑うよりまず怒るでしょうね。
メランコリック・デイ
2008/08/18
最終回のあのシーン直前。ハジは多分こんなネガティブじゃない(笑)